MPのテーマ

横浜ボートシアターの『さらばアメリカ!』(作・演出:遠藤啄郎)という舞台の短い歌を膨らませて作った曲です。
最初はどんな感じだったかというと、「進駐軍のお方はすべてに優先よ!特にMPのお方は真っ先にどうぞ」という言葉のみに歌がつけられている状態(Aバージョン)でした。

そもそもなんでこの曲を作ったのかというと、『さらばアメリカ!』の公演の後、同作をベースにした『歌で辿る戦後』(構成:吉岡紗矢)という語り作品をやることになったためです。当初は台本にAバージョンが組み入れられたと思うのですが、これだとちょっと味気ないなと思ったので、僕から歌を長くすることを提案したはずです。

とはいえ、「進駐軍のお方はすべてに優先よ!特にMPのお方は真っ先にどうぞ」だけではいくらなんでも膨らませようがないため、『さらばアメリカ!』の台本で使えそうな言葉をピックアップして一曲にしたのでした。抜粋ではありますが、言葉は原作そのままです。

曲の設定としては『さらばアメリカ!』に準じて、「1980年代のバブル真っ只中で太平洋戦争終結直後の幻を見る」ようなイメージです。『さらばアメリカ!』の時はそこまで80年代の雰囲気を出していませんが、『歌で辿る戦後』では曲の尺の問題や、「語り」という引いた視点の中で曲が始まるということもあり、より現代的な視点に引き寄せ、自分が思う80年代的な要素も入れたつもりです(80年代といえば、奇しくも横浜ボートシアターが『小栗判官・照手姫』や『マハーバーラタ 若きアビマニュの死』を発表した時代です)。

もう一つ作曲段階で念頭に置いていたのは終戦直後の歌謡曲の雰囲気です。なんとなく昭和の曲には影のあるマイナーキーのメロディが多いという自分なりの世界観があり、その範疇で曲を展開させるように気をつけました。

ちなみに『さらばアメリカ!』での経験は自分にとって、そして「あめたち」にとって非常に重要なのですが、今の僕にはそれを十分に語る力がありません。いつか良い機会にまた書きたいと思います。

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